大学受験小論文の出題形態として最近増加傾向にあるのは、課題文や資料を与える形式です。したがって、受験生はまずどのようなことが記述されたものかを正確に読み取らなくてはなりません。
今回のブログ記事は、資料としてデータが与えられたときに、特に気をつける点をお伝えします。
前提
まず、データが与えられたときの読み方の大前提を確認しましょう。
①グラフや表のタイトルを確認する
⇒与えられたものが何なのかを理解できるので、必ず読みましょう。
②軸が表しているものを確認する
⇒例えば縦軸と横軸があるなら、それが示していることを単位と併せて把握しましょう。
③突出した数字を確認する(時間軸があるなら、変化の大きいものも確認する)
⇒この数字や変化の大きい項目などが、読み取りなどで実際に書くことも多いので、しっかりおさえましょう。
特に気をつけること①~注釈読むことを手抜きする~
さて、以上の前提を踏まえた上で、特に気をつけることをいいます。これは、受験生を指導しているとよく起こしてしまうことです。具体的には、①注釈をしっかり読まない、②世間に流布する「常識」(≒先入観)でデータを読もうとする、というものです。
まず、①の注釈というのは、データの下あたりに小さく書いてあるものですね。これが重要なヒントだったり、聞きなじみのない言葉を詳しく説明してくれたりする部分になっています。
しかし、小さく書いてあるからか、受験生はあまりしっかり読まずに小論文の課題に挑もうとしがちです。これは、危険なので絶対に止めましょう。
特に気をつけること②~先入観でデータを読まない~
次に、②は、きちんと読み取れているはずなのに、自身の中で見聞きして作り上げた「常識」にひきづられて、結局、読み取りを曲解してしまうケースが散見されています。
具体例を出しましょう。これは、拙著で載せたデータですが、読み取りをしてみてください。
これは、昭和62年~平成30年にかけて約3割の人が大学卒業後3年以内に辞めているというデータですよね。つまり、日本は、今も昔も、若者の約3割が会社を3年以内に退職する行動を起こす社会のようだということです。あるいは、平成11~平成18年卒という就職自体が厳しかった時代の若者は、他の時期より離職率が多かったのだなとは読み取れます。
そうしたことを偏見なく読み取り、そのことを小論文に書こうと思っている人は良いのです。
しかし、昔より今の若者の方が甘えているとか根性がないとか聞いたことがあり、そうなんだろうなと(これが「常識」ですね)思ってこれに引きずられている人は、何とかそのことと整合性がつくように読もうとしてしまいます。
例えば、「平成7年以降から30%を超えることがほとんどとなっているので、最近の若者は以前よりも多く3年以内に辞めてしまうようになった」などです。
この読みは、問題があります。なにせ、平成7年卒業の方は、浪人などなくストレートできた人において、この表の令和2年において47歳となる年齢です。流石に、この辺りからを若者と捉えるのはおかしいでしょう。
それに、現在の若者よりも、平成11~18年卒(=令和2年次において、36~43歳くらいの人)の方が若いときに辞めているというのがこのデータです。
以上の議論から、自分が何となく聞いたことのある「常識」に縛られてはいけないと理解してください。まっさらな気持ちでデータを読み取るようにしましょう。
ちなみに、そもそも、大学での学問は、「問」の字があるように、今まで信じられていることが本当にそうなのかと疑問に思い、調べていき、本当は○○だと言い得る見解を獲得する作業を大切にしています。そのため、受験生にも根拠の乏しい「常識」に振り回されない態度が求められています。
難関大といわれる大学の小論文試験では、この態度を確認しているのではと思われる出題が多々あります。データを、データの外にある知識(≒先入観)でばかり読もうとしないよう気をつけましょう。
まとめ
最近、データを読み取らせる小論文は多くなっています。高校生のカリキュラムにおいて、データの利活用が重視されていますので、この動きは今後も続くでしょう。そのため、読み取りはとても大切な作業です。
本記事に挙げた5つ(3つの前提と2つの特に気をつけること)をしっかりマスターしましょう。また、拙著には、他にもデータの読み取りに大切なことを取り上げています。興味ある方は、是非手に取って頂き、小論文学習の参考にしていただければ幸いです。